金ちゃんの小学校留学：大人が小学生になりに学校へ！
わがクラスには、月に２〜３日、小学生になりにくる金ちゃんという大人がいます。
彼との出会いは３年前、彼の所属するＢＢＳ（←ＢＢＳについては←をクリック）の学習会に私が呼ばれ、子どもの権利条約のことについてお話しさせてもらいました。
そのとき、金ちゃんも、彼の活動について話をしたのですが、金ちゃんの口から出た言葉が、「元気のいい子は太陽のにおいがする」でした。
そう金ちゃんは、子どもたちと本当の意味で接して、遊んでいたのです。
そんな金ちゃんの夢が２つありました。
１つは、小学生になりたいということです。
２つ目は、和歌山市にプレーパークをつくりたい。
金ちゃんは、子どものことを本当にわかろうとすれば、子どもになるのが一番だと言うのです。そして、いまの学校のしんどさや子どもたちのしんどさをわかるためには、小学生になって、子どもたちといっしょに勉強したり、遊んだり、給食を食べたりするのが一番だということです。
それならばと言うことで、私のクラスに来てもらうことにしたのです。
１年目は、５年生のクラスに２日間だけでしたが、カエルや猿のかぶり物をして入ってきた、変な大人に子どもたちは大興奮でした。
たった２日間でしたが、子どもたちはそれからも、放課後や休みの日に金ちゃんの家に遊びに行ったり、電話をしたりしていました。
そのときのクラスには、学校に行きにくい子もいましたので、金ちゃんといっしょにその子の家に遊びに行きました。それ以後も金ちゃんと遊んだり、話をしたりすることができました。
２年目は今の勤務校に変わった年でした。
今の勤務校はもともと外部からの講師やゲストティーチャーを受け入れる学校でしたから、金ちゃんの小学校留学もすぐにＯＫでした。
２年目も５年生のクラスでした。しかも、２日間というのではなく、年間を通して、月に２〜３日留学するということになりました。
こうなると私も、金ちゃんが来たからと特別の授業をするわけにもいかず、日頃の授業をし、日頃の何も飾ることのない（もともと飾っていませんが…）姿をさらけ出すことになったのです。
また、縁というものは本当に人と人を結びつけるもので、勤務校の校区に、金ちゃんの２つ目の夢であった「プレーパーク」を金ちゃんは地元自治会にも理解を得て、里山を開拓しつくりつつあったのです。このプレーパークは本当にすてきな場所なのです。
この年は、総合的な学習の時間に、プレーパークで秘密基地づくりにもとりくみました。子どもたちは、竹藪から竹を切り出し、木の上に秘密基地をつくっていきました。
ここでは、金ちゃんは小学生という立場ではなく、「プレーリーダー」という指導者の顔を見せます。
そして、今年３年目は、２年生のクラスです。
金ちゃんのことはもうすっかり知っている子どもたちは、金ちゃんが来てくれることを心待ちにしています。
いっしょに勉強する中で、まちがうことをおそれがちな子どもたちも、「金ちゃんもまちがうし…」と、まちがってもいいんだということを学びます。
給食もいっしょに食べ、そうじもし、ろうかを走って叱られ、授業中にいらない話をしていて注意され、テストも受け、跳び箱や水泳もいっしょにする金ちゃんからいろいろなことを学んでいくことでしょう。
金ちゃんはできの悪い生徒です。それがいいんです。
もし、仮に教師が小学生になって、金ちゃんのようにしても、きっと優等生すぎておもしろくないと思うのです。大人だって失敗もするし、まちがうところがいいのです。だから、子どもたちは安心できるのです。
今は、本当にはやいスピードで世の中がすすでいます。もちろん小学校も例外ではありません。金ちゃんのような大人の存在は、鳥にとっては止まり木であり、「心の浮き輪」であるのです。
先生には言いにくいことも、金ちゃんには言えるでしょうし、ホッとできる存在であると思います。
金ちゃんと私は、留学の日程の調整はしますが、打ち合わせや反省はしません。
それは、あくまでも金ちゃんは小学生として留学しているからです。子どもと打ち合わせをして授業をする先生はいませんからね。
金ちゃんは、プレーリーダーのときとは別に、指導者の顔になるときがあります。それは、「金ちゃんスペシャル」として、楽しい科学実験や工作をしてもらうときです。そう、金ちゃんはたのしいことをつくり出す名人だから、いろいろなたのしい遊びについてはプロフェッショナルなのです。
この間、 参観日のあと学級懇談会がありました。２年生がスタートして２ヶ月あまりの懇談会でしたが、参加された保護者の方々は、「子どもたちは金ちゃんのことが大好きで、学校に来てくれるのを心待ちにしています」「なにしろ学校に行くのがたのしみで仕方ないという様子です」「いろいろな大人が子どもたちに関わってくれるのがうれしい」とおっしゃってくれました。
これからは、金ちゃんがもっともっと他の学校にも留学してくれればいいなと思います。特に中学校にも行ってみてほしいと思うのです。また、金ちゃん以外にも留学してくれる人を増やしていければ、もっともっとたのしくなるのではないかと思っています。
