１９９９．全国夏期セミナー in長野
模擬授業
Ａ子はなぜ売りに走ったか
海南・海草サークル 角田弥生
学校の生徒の授業は、保健の時間の枠をもらって実践しました。
３年生の生徒は、日頃から保健のことはもちろん、性のことも、それ以外でもおしゃべりの中に混ざって相談を受けたり、オープンに語れる関係ができていたので、リラックスして授業ができました。
性のアンケートの所では、マスコミの情報での知識だけで性のイメージをしていることが改めてわかりました。援助交際については、授業者の予想よりも多い肯定的な意見がたくさん出され驚きました。
実は、本校の生徒に授業を実施した内容と、セミナーで実施した内容は少し違っています。援助交際の体験談は、「Ａ子はなぜ売りに走ったか」のみ１本で、Ａ子のとった行動や選択についてを考える授業をしました。その上にイメージと現実のギャップを教えるため、新宿女性アドバイザーの兼松佐知子さんの
「売春の危険１０箇条」
を参考に援助交際から生じる可能性のある問題（山中セミナーでの実践をお借りして）を提示し、さらにＡ子の行動・選択を考えさせる授業をしました。その結果、生徒が書いた感想には、予想したとおり、最初は肯定的に受け止めていた生徒までも、考えの最後には、「私は絶対したくない」と結んでいます。
この結果をセミナーの前にわざわざ大阪まで足を運んでくれたコーディネーターの加納先生に話したところ、セミナーの授業を成り立たすための重要なポイントとなる何点かを教えてくださいました。それは次の通りです。性教育を行う前提として、
①自己肯定感（肯定的性自認）をもてること実践課題として
②科学的な知識を身につけること
③性のイメージを豊かに築くこと
これらをめざして授業をすることです。授業の工夫として
・体験談はＡ子だけでなく、何人かの体験を用意してはどうか（いろんな価値観を見いだせる）
・お金＝援交という図式だけの簡単な内容に終わってしまわないように、お金の価値、人間の価値について広められるように（商品化の問題）
・援交を完全に否定してしまわないように。一人一人の生き方に寄り添いながら授業をするように。
というありがたい、ためになるアドバイスをいただきました。
ということで、事務局の仲間、性教協の仲間、養護教諭の仲間と一緒に考えてもらって、できたものを持って長野へ行き、授業をすることになったのです。セミナーでは……
和歌山性教協開設１０周年を迎えるというのに、全国セミナーへの参加はこれが初めて。おまけに模擬授業も初体験。今思えば、ようこんな大それたことを安請け合いしてしまって、あ～恥ずかしいというのが本音です。でも、このおかげでたくさんのいい経験をさせていただいた皆様に感謝しております。
授業の中での討論では、活発な意見や質問が出されました。授業者が勉強不足のため、参加者のみなさんの期待に応えることができなかったことは大変悔やまれますが、私自身は新しく気づかせていただいたり、再認識させていただいたことがたくさんあり、本当によかったと思います。
一つは、講師のセクシャリティが浅いと生徒の心を揺さぶる授業ができないということを痛感しました。教師がしっかりと考えを芯に持っていないと「ねらい」に近づく授業にならず、生徒の気持ちを混乱させてしますということ。「今」を生きている生徒たちの現状を十分把握できていなかった自分に気づかせてくれました。
また、資料の扱い方のむずかしさ。特に、今回の授業では、体験談を何例も用意したことで、興味付けしてしまい、まちがった（？）好ましくない考え方を刷り込んでしまったところもあったようです。資料を少なくしても、グループディスカッションをするなどの方法で、生徒の考えを引き出すことができたのではという意見も出されました。
参加者のみなさんの感想の中で、この授業で出てきた課題が明らかにされていると思うので、紹介したいと思います。・性は個人差や環境の違いが大きいために、全体の指導と個別の指導が必要です。いろいろな状況や知識を与えながら、自分の選択肢を選ばせることは、本当に大変だと思います。
・何かと興味本位でとらえがちな援助交際であるが、その中に含まれているこの世代の子どもたちの問題の大きさに気づかせてもらいました。興味本位を逆手にとって、これらの問題を考えさせるいい機会になったと思います。こういった問題は、避けるのではなく、正面から受け止めることが絶対に必要だと思います。
・援助交際を気軽にしてしまう少女たちの心にいかにしてアプローチしていくかが、私たち大人に突きつけられた問題なのではないでしょうか？
授業案
↑
クリックしてね
